高校生の僕が中学生に殴られて泣いた話

日常, 過去話シリーズ

しんと静まり返った部屋で、不意に思い出される苦い記憶。

僕が高校1年の頃、友達の家で僕を含めて3人で遊んでいたときの話である。ちょうどお昼の時間でお腹が空いていたので、僕らはいつも通り近くのコンビニで菓子パンを買うことにした。コンビニに着いた僕らは適当にパンを買い終えて、コンビニから出ようとしていた。その時、たまたまコンビニの店内にいた不良っぽい見た目のグループと目が合ってしまった。僕は普通の顔をしていたつもりだったが、どうやら相手にとっては気に食わない顔をしていたらしい。

不良「何ガン飛ばしてんのやぁ、コラァ!!」

コンビニの店内から僕に向かって怒号が浴びせられた。すでに僕らはコンビニから出ていたため、知らんぷりしてそのまま帰ろうとしていた。正直怖かった。何の理由もなく、いきなり罵声を飛ばされたら誰だって怖い。当然だ。背後からかすかな怒鳴り声が徐々に近づいてくる。何人かが追ってくる足音が聞こえる。その足音に気づいていながらも、後ろを振り返らずに早足で逃げるように僕は歩く。一緒にいた友達からしたら、どういう状況か理解できなかったであろう。横から「お前なんかしたの?」と聞かれる。僕は作り笑いをして「なんだろう、分からない。」と答える。強がって見せてはいたものの、僕の体は震えていた。だって怖いもん。仕方ないだろう。

そしてついに僕は奴らに捕まった。

不良「ちょっと待てやゴラァ!」

僕「す、すみません。なんでしょうか・・・?」

僕の声には自然とビブラートがかかっていた。相手は3人グループだった。揃いもそろっておっかない格好だ。

不良「お前ガン飛ばしたよな?」

僕「いや・・・分かんないです、何もしてないです」

このとき僕は友達に助けを求めようとしたが、友達は僕から少し距離を置いていた。仕方ない、そりゃ怖いもん。しかし、友達が僕の方を見て笑っていたのは、恐怖のあまり笑っていたのか、それとも怖くて震えていた僕があまりにも滑稽に見えて笑っていたのかはいまだに謎である。すると不良グループの1人が突然、

「なあ?殴っていいか?殴っていいか??」

と言い出した。そんなの嫌に決まっている。しかしそんな僕の思いを吐き捨てるように、彼らは僕の顔面に容赦なく殴り掛かった。殴られた僕は地面に倒れこむ。顔面に鋭い痛みが走る。顔を手で覆うと、その覆った手には真っ赤な血がこびり付いていた。鼻血が大量に出ていた。不良グループは笑っていた。一発浴びせてスッキリしたのか、「じゃあな、雑魚」とだけ言って、スタスタと僕らのもとから離れていった。友達が駆け寄って「大丈夫か」と心配してくれた。大丈夫ではなかった。一応僕は「うん、大丈夫」と言ったが、涙声だった。僕はガチ泣きしていた。なぜ泣いていたかは当時の自分でも分からなかったが、おそらく理不尽に殴られたことに対する悔しさ、やり返すことのできなかった自分の弱さ、友達の前で情けない姿を見せてしまってことへの恥ずかしさ、これらが相まって僕は泣き出したのだろう。もちろんここで仕返しをしなかったことは正解であると思いたい。そもそも暴力は良くないし、さらに被害を受ける危険性もあった。

僕「ごめん、今日は帰るわ」

このまま居ても気まずかったのか、結局僕は一人で顔を覆いながら家に帰ることにした。もちろんティッシュを鼻に詰めて。友達も何も言わずに、そっとしておいてくれた。家に帰るころには鼻血は収まっていた、親には今日のことを内緒にしようと思った。自分の中で無かったことにしたかったのだ。親からも情けないと思われたくなかった。

次の日の夜、誰かから電話が掛かってきた。親が受話器を取るとしばらくして、「あんたに」と受話器を渡してきた。「誰から?」と聞くと、「○○先生」と言われた。その先生の名前には聞き覚えがあった。僕の出身中学の数学の先生だった。正直あまり記憶にない。僕が受話器を取ると、

先生「おー、○○(僕の名前)か?」

僕「はいそうですけど・・・」

先生「あのなー、お前うちの学校の生徒にちょっかい出したらしいな?」

え・・?驚きのあまり言葉を失う。かろうじて「どういうことですか?」と聞くと、

先生「何か○○のコンビニでうちの生徒を睨み付けたらしいじゃないか?」

先生の口から出たそのコンビニはつい昨日、僕が菓子パンを買ったコンビニと同じであった。高校生の僕はそのコンビニの近くで殴られた。僕はとっさに声が出せず、「違います」と言い返すことはできなかった。それから先生は続けて、「もう高校生なんだから」「年下相手に大人げない」「なんでガン飛ばしたんだ」と言い、15分程電話越しに説教を受けた。最終的には「もう二度としないように」と注意を受けて電話は切られた。どうしてこうなったかは未だに分からないが、きっとあの中学生が何か言ったに違いない。そしてそれを自分の武勇伝としてクラス中に言いふらしているのだろうと考えると、怒りと悲しみがあふれて、気づくとまた、泣いていた。本当に情けない男である。言い返すことはできたであろうにも関わらず、それができなかった自分の弱さに僕はまた泣いたのだ。つい昨日、中学生に殴られて泣いたばかりであるのに。

受話器を戻すと、親に「何の電話だったの?」と聞かれた。

僕は「何も」とだけ言って自分の部屋に閉じこもった。