修学旅行中「デュエル・マスターズ」で友達を失った話

日常, 過去話シリーズ

僕が中学生だった頃の話である。

当時、学校の間では”あるもの”が大流行していた。そう、タイトルにも書いてある通り「デュエル・マスターズ」である。

デュエル・マスターズ(通称デュエマ)とはタカラトミーが発売しているトレーディングカードゲームであり、現在でも多くの人々から愛されている。

もちろん僕もデュエマをやっていた。そして自分でいうのもなんだが、中学校の中でもかなり強かった方だったと思う。強かった理由としては2つ。豊富な経験値と情報量である。

まず経験についてだが、僕は決してデュエルマスターズを中学から始めたわけではなく、デュエルマスターズ第三弾「超戦士襲撃(マスター・オブ・デストラクション)」が発売された2002年、つまり僕が小学一年生だった頃から始めていたのだ。歴が長いため、プレイヤースキルやデッキ(40枚のカードの束であり、これらを駆使して対戦する)構築おいては初心者のそれとわけが違う。
僕が初めて当てたスーパーレアカード「流星の精霊ミーア」は今でも思い出深いカードである。

そして情報についてだが、まず当時僕の家にはパソコンがなかった。というより、現在ほどパソコンは家庭に普及していなかった。そんな中僕が一体どこから情報を得ていたかというと、それは近くの家電量販店である。僕は毎週の土曜日にペンとノートを片手に、家電量販店の無料PCコーナーに入り浸ってデュエマの情報を仕入れていたのである。果たして、貴重な中学校生活の青春を家電量販店の無料PCコーナーで費やす人などいたであろうか。デュエマで勝っていたとしても、別の何かで負けている気がしてならない。

こうした理由で中学生の中でも僕はかなり強いほうだったのだ。そろそろタイトルの話に移ろう。僕が修学旅行で東京に行ったときの話である。

僕は修学旅行を心待ちにしている人間ではなかった。クラスにもあまり馴染めていなかったこともあり、予定にあった上野もディズニーランドも正直行きたくなかった。ただ一つだけ楽しみにしていることがあった。それはデュエマである。修学旅行の計画をしているとき、クラスのカースト上位である男子達から

「おまえデュエマ持ってんだよな?修学旅行中こっそりやるべ。」

と言われたのだ。普段話しかけられることもなく、むしろ叩かれたり、筆箱を隠されるといった仕打ちを受けていたのだが、そんな彼らがわざわざ。というより彼らもデュエマやってたのか、これはデュエマを通じて彼らと友達になるチャンスではないかと思った。切札勝舞(当時の雑誌コロコロコミックで連載の「デュエル・マスターズ」主人公)も「勝っても負けてもデュエルが終われば友達」と言っていた。そんな期待を膨らませ、当時僕が持っていた中で最強のデッキである「ジャック・ヴァルディビート」デッキをポケットに忍ばせていた。(「ジャック・ヴァルディビート」はビートダウンデッキ(速い試合展開で勝利するタイプのデッキ)であり、デュエマの時間を減らすことによって先生に見つかる可能性を減らすという意図もあった。)

【ジャック・ヴァルディビート】
《永遠のジャック・ヴァルディ》をメインに据えた中速ビートダウン。ヴァルディビートとも呼ばれる。
核となる《永遠のジャック・ヴァルディ》は手ごろなコストと高いカードパワーを誇り、除去能力でブロッカー殴り返し要員を蹴散らすことが出来る強力なクリーチャーである。このクリーチャーを軸に、進化元ビートダウンの共、弱点を補うカードでデッキを構築する。
出典:【ジャック・ヴァルディビート】 デュエルマスターズwiki

学校へのカードの持ち込みは禁止であったので、この上ないスリルであったことを今でも覚えている。

彼らとデュエマする時間は思っていたよりもすぐに来た。それは一日目、上野動物園でのことである。園内を観光していると、遠くの方で盛り上がっている声が聞こえた。気になって近くに行ってみると、クラスのカースト上位の集団がそこにはあった。気づかれないように見てみると、彼らはデュエマの勝ち抜きバトルをしていたのである。その光景に思わず僕はその集団に入ろうかと考えてしまった。ただ、そんな勇気もない僕がとった作戦は、集団の近くをシャトルランのように往復し、あちらから声をかけてもらうのを待つ作戦である。みなさんにとっては情けない光景かと思われるかもしれないが、当時の僕の心情のことを考えるとその勇気は称賛に価すると僕は思う。そして、その努力が功をなし、集団のリーダー的存在の人から、

「あれ?○○(自分の名前)じゃん。デュエルするべー」

と誘われた。僕は喜びを心の中のガッツポーズに抑えつつ、その勝ち抜きバトルに参加することとなった。

やはり僕は強かった。勝ち抜きということもあって次から次へとデュエルに勝つことができ、5連勝くらいしたと思う。しかし、最初は雰囲気がよかった(最初から悪かったかもしれない)のだが、ついに僕が勝つと、

「お前とデュエルしてもつまんねーわ」

と言われた。あまりにも突然の事であったため頭の中が真っ白になった。他にも「調子に乗んなよ」「自重しろよ」などと言われ、彼らはあっという間に僕から離れて行ってしまった。上野動物園の休憩スペースで周りの観光客に見られながら、「ジャック・ヴァルディビート」デッキを一人で片付ける当時の僕の姿は見るに堪えないものであっただろう。こうして僕は、彼らと友達になれるチャンスを無下にしてしまった。いや、友達になろうと考えていたのは僕だけなのかもしれない。なぜなら、彼らは僕と仲良くなるメリットなんてこれっぽっちもないのだから。

修学旅行一日目から、唯一の希望であったデュエルマスターズで計り知れない絶望を味わった僕にとって、残りの修学旅行なんて消化試合であった。思い出は特にない。あるとすれば、残りの日数でデュエルを一度もしなかったということだけだ。

こうして、いわゆる青春の1ページともいえる修学旅行は何の思い出も残せずに終わった。駅で解散となった後、電車の乗り方が分からなかった僕は、修学旅行で余ったお金をタクシーに費やした。

終わりです。書いてて空しくなりました。でもデュエルマスターズのおかげで作れた友達ももちろんいます。大げさに話していますが、単純に彼らとの相性が悪かっただけのお話です。なので切札勝舞は悪くないです。

以上。